調査レポート

充実管理加算 試行データ提出、26医療機関のリアル
― 医師ひとりでも乗り越えられた理由

公開日:2026年9月25日

常勤医師1名のクリニックが84.6%、そのうち半数以上が試行データ提出を「たった1人」で担当していた――。

2026年度改定で新設された「充実管理加算」(旧・外来データ提出加算)は、生活習慣病管理の実績をデータで示すことで算定できる、貴重な増収源です。しかし、実際に試行データ提出を経験したクリニックの声を集めると、そこには小規模クリニックならではの負担と、思ったより早く終わったという意外な実感の両方がありました。

本記事は、試行データ提出を経験した26医療機関へのアンケート結果と、各種調査データをもとに、制度の仕組みから、「どんな規模のクリニックが、どんな負担を感じたのか」「なぜ医師ひとりに作業が集中しやすいのか」「手間と増収は見合うのか」までを、数字と実際の声から掘り下げます。

  • DATA 1

    84.6%

    常勤医師1名のクリニック

  • DATA 2

    53.8%

    1人だけで作成・提出を完了

  • DATA 3

    85.5%

    実測ベースの平均時間削減率

充実管理加算とはどんな制度か

充実管理加算は、厚生労働省が実施する「外来医療、在宅医療、リハビリテーション医療の影響評価に係る調査(外来医療等調査)」に準拠したデータを継続的に提出している保険医療機関を評価する診療報酬加算です。
生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)への上乗せ評価として、月1回・10点〜30点が算定できます。

※関連制度:地域包括診療料・地域包括診療加算向けの「(新)外来データ提出加算」、「在宅データ提出加算」、「リハビリテーションデータ提出加算」

  • POINT 1

    対象となる患者

    • 生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)を算定している患者

    • 上記の算定有無にかかわらず、糖尿病・高血圧症・脂質異常症のいずれかを主病とする患者

  • POINT 2

    実績に応じた3段階のアウトカム評価

    • 充実管理加算3(体制整備のみ・10点)からスタート

    • 生活習慣病管理の実績評価により、充実管理加算2(上位50%の実績・20点)、充実管理加算1(上位20%の実績・30点)へと区分が上がっていく仕組み

  • POINT 3

    制度の変遷

    • 2022年度:「外来データ提出加算」として新設

    • 2026年度改定:評価内容が見直され、「充実管理加算」に名称変更

普及は進んでいるのか:届出数の推移

旧制度(外来データ提出加算)は2022年度の新設以降ほとんど広がらず、令和8年6月の診療報酬改定で「充実管理加算」に見直され、データ項目数が緩和された後も、届出率はいまだ全国の1割程度にとどまっています。

  • DATA

    11.3

    %

    充実管理加算の届出率
    (令和8年9月時点)

  • DATA

    4,785

    /42,430

    累計届出済み医療機関数
    (同左)

  • DATA

    42~84

    時間

    月間の想定作業時間
    (500人規模の目安)

  • 時点

    名称

    新規届出医療機関数

    累計届出医療機関数

    割合(母数:42,430)

  • 令和7年6月(既存分)

    外来データ提出加算

    ―

    1,522

    3.6%

  • 令和7年9月25日

    外来データ提出加算

    220

    1,742

    4.1%

  • 令和7年12月22日

    外来データ提出加算

    511

    2,253

    5.3%

  • 令和8年3月17日

    外来データ提出加算

    274

    2,527

    6.0%

  • 令和8年5月25日

    外来データ提出加算

    476

    3,003

    7.1%

  • 令和8年9月16日

    充実管理加算

    1,782

    4,785

    11.3%

出典:厚生労働省「データ提出の実績が認められた保険医療機関における外来データ提出加算等の取扱いについて」通知(令和7年9月25日 保医発0925第1号〜令和8年9月16日 保医発0916第5号)、および令和7年6月19日(令和7年度第4回)入院・外来医療等の調査・評価分科会資料(厚生労働省)の既存分1,522件。

名称変更後の直近1回だけで1,782件増加した一方、母数(42,430件)に占める割合はまだ11.3%。この伸びを「普及が加速し始めた兆し」と見るか、「9割は依然として未届出」という現実を重く見るかは、評価が分かれるところです。

データ項目数の緩和という「制度側のハードル引き下げ」が進んだにもかかわらず、全国の医療機関の約9割はいまだ未届出のままです。普及が進まない理由として、「仕組みが複雑で何をすればいいか分かりづらい」「手間の割に利益にならない」「入力に必要なスタッフの手が足りない」という3つの壁が指摘されています。この壁は、今回アンケートに回答した26医療機関にも、そのまま当てはまるものでした。

多くのクリニックが「知っているのにできない」理由は、収益性以上にITスキルの壁と事務負担への恐怖にあると指摘されています。

  • スタッフのITアレルギー:「これ以上新しい操作を覚えるのは無理」という現場の声が、導入のブレーキになっている

  • 人手不足による作業限界:事務員は日々の受付業務で手一杯で、提出用データを作成する余裕がない

アンケート調査概要

  • 調査対象:試行データ提出を経験した、ライフケアコンパス導入クリニック(26医療機関)

  • 調査時期:2026年9月

  • 調査方法:アンケート調査

  • 実施:コガソフトウェア株式会社(ライフケアコンパス運営元)

回答クリニックの素顔:常勤医師1名が84.6%

今回アンケートに回答した26医療機関は、スタッフ数こそ1〜2名から10名以上までさまざまでした。
しかし共通する傾向がありました。常勤医師が「1名」のクリニックが84.6%を占めていたことです。

常勤医師数の分布グラフ:回答26医療機関のうち84.6%が常勤医師1名(n=26)

図1:常勤医師数(n=26)

スタッフ数の分布グラフ:回答26医療機関のうち2名以下が1件、5名以下が4件、9名以下が9件、10名以上が12件(n=26)

図2:スタッフ数(常勤医師を除く、n=26)

スタッフが10名以上いるクリニックでも、医師は1名。新しい行政対応が発生したとき、それを引き受けるのは、結局のところ院長自身であることが多いという実態が見えてきます。

実際、試行データの作成・提出を担当した人数を尋ねたところ、26件中14件(53.8%)が「1人だけ」で作業を完了させていました。院長本人が主担当だったケースも8件ありました。

試行データの作成・提出を担当した人数の分布グラフ:回答26医療機関のうち53.8%が1名(n=26)

図3:試行データの作成・提出を担当した人数(n=26)

誰が主に担当したかの分布グラフ:回答26医療機関のうち医療事務スタッフが42%、院長が38%、事務長が23%(n=26)

図4:主に担当した人(複数選択、n=26)

医師ひとり体制の「ジレンマ」

「人を増やせば楽になる」――分かっていても、簡単ではないのが小規模クリニックの実情です。
各種調査から見えてくる背景を整理すると、次の4つが挙げられます。
だからこそ、充実管理加算の対応や試行データ提出のような新しい事務作業は、医師自身の肩にのしかかりやすくなります。

  • 01

    無床診療所には、実は法定の人員配置基準がない

    開設は医師1人でも可能で、どれだけの人員を置けば適正かという明確な標準がありません。

  • 02

    「1日40人来院」規模でも、看護師1名・事務2名程度が目安

    診療所の平均的な1日あたり患者数は34〜41人程度とされ、採算ラインとされる40人規模でも、余剰人員があるわけではありません。

  • 03

    医療事務の人手不足は年々深刻化

    小規模なクリニックほど1人あたりの業務負担が重くなりやすく、離職リスクも指摘されています。

  • 04

    診療報酬改定のたびに、事務対応は増える一方

    スタッフの賃上げ圧力も続いており、「新しい事務作業のために簡単には人を増やせない」という構造的な難しさがあります。

つまずきやすい2つの関門

届出から提出完了までの流れは、次の5つの工程に分かれます。

①「様式7の10」届出 → ②厚労省システムのセットアップ → ③外来様式1の作成 → ④提出用ファイルの作成 → ⑤オンライン提出

このうち突出して負担が大きかったのが、③外来様式1の作成と④提出用ファイルの作成でした。

「サポートがなければ自力では難しかった」と回答された工程のグラフ。外来様式1の作成が88%、提出用ファイルの作成が73%(n=26)

図5:「サポートがなければ自力では難しかった」と回答された工程(n=26)

具体的には、何につまずいたのか

③外来様式1の作成ではファイルの取り込み方法、④提出用ファイルの作成では作業の順番やエラーの原因把握に関する声が目立ちました。

  • ③外来様式1の作成:UKE・CSVファイルの取り込み方法が分からなかったという回答が26件中10件(38.5%)、対象患者・項目の定義が分からず、進め方に迷ったという回答が26件中8件(30.7%)

  • ④提出用ファイルの作成:エラーの原因や直し方が分からず、対応に数日を要したケースも(26件中13件・50%)

外来様式1の作成でつまづいた点を集計したグラフ。UKEやCSVの取り込み方が分からなかったという回答が10件(38.5%)、対象患者・項目の定義が分からず進め方に困ったという回答が8件(30.7%)

図5-1:③外来様式1の作成でつまずいた点(上位5件)

外来データ提出用ファイルの作成でつまづいた点を集計したグラフ。エラーの原因や直し方が分からず、対応に数日を要したケースも(26件中13件・50%)

図5-2:④提出用ファイルの作成でつまずいた点(上位5件)

「想像より大変だった」クリニックの分かれ目

セットアップ・様式1作成のいずれかで「想像より大変だった」と回答したクリニックは、26件中17件(65.4%)。大変だと感じること自体は、決して珍しいことではありません。

興味深いのは、同じ17件の中でも最終的な評価には幅があったことです。満点(推奨度9〜10点)をつけたクリニックが6件ある一方、6点以下の低評価も4件(全体の低評価5件すべて)を占めていました。

  • 「丁寧に詳細に何度でも教えて頂いたので」

    推奨度10点だったクリニックより(点数をつけた理由)

  • 「段取りや引継ぎ等でかなりの時間がかかってしまった」

    推奨度が低かったクリニックより(改善要望)

大変だったこと自体よりも、そのつまずきを担当者のサポートで解消できたかどうかが、最終的な評価の分かれ目になっていたようです。困りごとが起きたときに、すぐ相談できる体制があるかどうかが重要だといえます。

実際にかかった時間は?

厚労省が無償提供する標準ツール「外来様式1入力支援ソフト」を使って外来様式1を作成した場合、患者1人あたり5分~10分の入力時間がかかります。対象患者500人あたりの月間想定作業時間は「42〜84時間」と見込まれます。(※弊社独自試算)

これに対し、アンケート回答クリニックが実際にライフケアコンパスを使って作成した時間(1か月目)を、各院の対象患者数に応じた想定時間と比較すると、次のような結果になりました。

  • AVG

    63.1

    時間

    標準ツールでの想定時間
    (平均・月間)

  • AVG

    9.1

    時間

    ライフケアコンパスでの所要時間
    (平均・1か月目)

  • RESULT

    85.5

    %

    平均削減率
    (想定ー実際)

外来様式1作成にかかった時間の比較グラフ。標準ツールと比べて、ライフケアコンパスを使った場合、作業時間を85.5%削減できた

図6:外来様式1作成にかかった時間の比較(1か月目・対象患者数の少ない順)

対象患者数あたりで見ると、1か月目の入力に要した時間は実測で1人あたり約1.1分。標準ツールの想定(1人あたり5〜10分)と比べて、大幅に短縮されていました。レセプト電算ファイル(UKE)の取り込みによる自動作成が、体感的な「思ったより早かった」につながっているようです。

さらに、前月までに入力したデータを翌月に引き継ぐ「Do機能」の効果もあり、2か月目のデータ入力時間は、1か月目と比べて平均36.9%短縮していました。対象患者数が1,000人を超える2件は、いずれも2か月目に半分以上の時間短縮を達成しています。

外来様式1作成にかかった2ヶ月目の作業時間の比較グラフ。2か月目のデータ入力時間は、1か月目と比べて平均36.9%短縮していた。対象患者数が1,000人を超える2件は、いずれも2か月目に半分以上の時間短縮を達成。

図7:対象患者数 × 2か月目の作業時間短縮率

手間と増収のバランス

充実管理加算は、生活習慣病管理の実績に応じて3段階に分かれるアウトカム評価です(1点=10円)。

区分

施設基準

点数

金額

充実管理加算1

体制整備+上位20%の実績

30点

300円/人・月

充実管理加算2

体制整備+上位50%の実績

20点

200円/人・月

充実管理加算3

体制整備のみ

10点

100円/人・月

今回のアンケート回答クリニックの対象患者数は、109人〜1,220人(中央値:415人)と幅がありました。
中央値の増収額を作業時間のコストと比較して収支を試算すると、黒字の結果となりました。

試算例:対象患者415人(中央値)・充実管理加算3(10点)の場合

加算による月間の増収(試算)

415人×10点(100円)=約41,500円

実測ベースの作業時間(1人あたり約1.1分から換算)

月あたり約8時間

人件費換算(時給1,500円と仮定)

約12,000円

試算上の収支感

+29,500円/月(加算による増収 > 人件費)

見込み増収額はどれくらいか

充実管理加算は生活習慣病管理料を算定した月にのみ上乗せされます。
通院頻度は患者によって異なるため、年間の見込み増収額を幅で試算しました。

対象患者数

加算3(10点)

加算2(20点)

加算1(30点)

最小(109人)

4.4〜13.1万円

8.7〜26.2万円

13.1〜39.2万円

中央値(415人)

16.6〜49.8万円

33.2〜99.6万円

49.8〜149.4万円

平均(501人)

20.0〜60.1万円

40.1〜120.2万円

60.1〜180.4万円

最大(1220人)

48.8〜146.4万円

97.6〜292.8万円

146.4〜439.2万円

生活習慣病管理を行う患者の1回あたり平均的な診療報酬(約5,740円)と比べると、充実管理加算3で約1.7%、加算2で約3.5%、加算1で約5.2%の上乗せに相当します。決して劇的な収益増ではありませんが、着実な増収機会だといえます。

通院が途切れると、その増収も失われる

充実管理加算は、患者が通院をやめれば、その分の増収も失われます。
厚生労働科学研究とJ-DOIT2の成果によれば、通常診療を受けていた2型糖尿病患者のうち8.25%が2ヶ月以上受診を中断していた一方、受診促進や療養指導などの支援を行った群では3.04%にとどまり、支援により中断率が約63%改善したことが分かっています。

試算例:対象患者415人・充実管理加算3・月1回通院(年間49.8万円の見込み増収)の場合

通常診療での中断による年間の機会損失(試算)

約4.1万円

支援を行った場合の年間の機会損失(試算)

約1.5万円

継続受診の後押しによって守れる増収(試算)

約2.6万円/年

通院中断は、増収の減少だけでなく患者の健康リスクにも直結します。
1年以上治療を中断した糖尿病患者では、腎症の発症リスクが1.97倍に高まるという報告もあり、通院が途切れそうな患者に気づき、声をかけ続ける体制が重要だといえます。

レセコン・電子カルテはクリニックごとにバラバラ

「仕組みが複雑」という壁の一因は、クリニックが使っているレセプトコンピュータ・電子カルテが極めて多様であることにもあります。
今回の26医療機関では、レセコン14種類・電子カルテ14種類が使われており、他院と同じ組み合わせだったのは17件、残る9件はそれぞれ異なる組み合わせでした。

  • 14

    種類

    使われているレセコンの種類

  • 14

    種類

    使われている電子カルテの種類

  • 17

    /26

    レセコン・電子カルテが
    同一組み合わせの医療機関数

特定のベンダーに標準化されているわけではなく、クリニックごとに異なるシステムからのファイル出力に対応する必要がある――これも、試行データ提出の「最初の一歩」でつまずきやすい理由のひとつです。

同じ道を歩んだクリニックの声

実際に試行データ提出を完了されたクリニックの声をご紹介しております。詳しくは導入事例ページをご覧ください。

充実管理加算の試行データ提出を完了されたクリニックの導入事例→

まとめ:医師ひとりでも乗り越えるために

これまで見てきた「どんな規模のクリニックが、どんな負担を感じたのか」「なぜ医師ひとりに作業が集中しやすいのか」「手間と増収は見合うのか」を、数字と実際の声から掘り下げた結果をまとめます。
充実管理加算を乗り越えるご不安があれば、是非、ライフケアコンパスにお気軽にご相談ください。

  • 01

    担当者の人数

    常勤医師1名のクリニックでも、試行データ提出に取り組めている。半数以上が「たった1人」で作業を担っている実態がある

  • 02

    手間がかかる工程

    「外来様式1の作成」「提出用ファイルの作成」は特に手間がかかり、人手を増やせない小規模クリニックほど負担が重くのしかかる

  • 03

    加算による増収と収支

    実際にかかった時間は、標準ツールでの想定より平均85.5%短く、実測ベースでは加算による増収が手間コストを上回る結果になった

続けて読む:充実管理加算の算定手順とスケジュール(コラム)→

Q&A

よくあるご質問

Q

充実管理加算とはどんな制度ですか?

A

厚生労働省の「外来医療等調査」に準拠したデータを継続的に提出している医療機関を評価する診療報酬加算です。生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)への上乗せ評価として、月1回・10点〜30点が算定できます。

Q

充実管理加算の試行データ提出は、医師ひとりでも対応できますか?

A

今回のアンケートでは、常勤医師1名のクリニック26件中14件(53.8%)が、実際に1人だけで作成・提出を完了しています。負担はありますが、対応は可能です。

Q

試行データ提出には、どのくらいの時間がかかりますか?

A

厚労省の標準ツールを使う場合、対象患者500人規模で月42〜84時間が想定されます。一方、外来データアシストを使った実測では、1か月目平均9.1時間(想定より85.5%短縮)でした。

Q

どこでつまずきやすいですか?

A

「外来様式1の作成」(UKE・CSVファイルの取り込み方法など)と「提出用ファイルの作成」(エラー対応)の2工程で、特に負担を感じたという回答が多く集まりました。

Q

加算による増収は、作業の手間に見合いますか?

A

対象患者415人(中央値)・充実管理加算3の場合の試算では、月間の増収(約41,500円)が、実測ベースの人件費(約12,000円)を上回る結果になりました。

ライフケアコンパスの伴走サポートについて

「外来データアシスト」は、レセプト電算ファイル(UKE)の取り込みだけで9割のデータを自動作成し、手入力の手間を最大限省く設計です。届出から試行データ提出完了まで、リモート・電話でのサポートを通じて、医師おひとりでも取り組みやすい体制づくりをご支援します。